脊髄炎

 脊髄のいろいろな病気を総称して脊髄炎といっています。脊髄は脊柱を上下に貫く長い管である脊柱管の中に入っていて、長い索状をしています。

 脊髄のなかには、脳から胸部、腹部、四肢などへ行く運動神経などが通っています。したがって脊髄の病気におかされると、下半身への神経の伝導がおかされ、いろいろな症状があらわれてきます。

 ● 症状と経過
 横断性脊髄炎の症状が代表的で、これはおかされるレベル(高さ)から下の下半身の運動まひ、感覚まひを招きます。下肢が両側とも、まひを起こすことが多く、これを「対まひ」ともいいます。

 また、おかされるレベルが上方にあると、上肢も下肢もマヒすることがあり、これは「四肢まひ」と呼ばれます。マヒした手足の筋肉は、あまり細くなりません。膝反射は、たいてい亢進しています。

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 感覚は下半身が鈍くなっていて、触感、痛感、冷暖の感覚も失われていることが多く、このために傷を受けやすく、そこから細菌感染や床ずれが起こりやすくなります。また、排尿や排便も困難となり、尿閉、尿失禁をきたします。尿がたまると細菌が入って膀胱炎や、敗血症を起こすことがあります。

 発病のしかたは脊髄炎の種類によって異なり、まもなく、自然に軽快するものや、だんだん悪くなるもの、よくなったり悪くなったりするものなどがあります。また、まひが上にあがり、呼吸がおかされて死亡する上行性脊髄炎のようなものもあります

 ● 種類
 脊髄炎には、原因、病気の位置などによって、いろいろな種類があります。

 一次性感染症
 脊髄自身にウイルス、細菌、リケッチア、寄生虫が侵入する場合で、ポリオウイルスによる脊髄前角炎もこのひとつです。

 感染後症
 はしか(麻疹)などの発疹性感染症や、インフルエンザなどの急性熱病のあと、7~10日ぐらいして急に脊髄炎が起こることがあり、これらは感染後性脊髄炎と呼ばれています。

 ワクチン接種後脊髄炎
 ワクチン、特に種痘や狂犬病の接種後1~2週間で起こるものです。

 特発性
 これは急性のものが多く、まれには徐々におこる慢性脊髄炎もあります。特に原因らしいものがなくて、下肢がまひします。なかには、妊娠中に急にかかることがあり、妊娠中絶を必要とする場合もあります。しかし、母子とも救うことができるような状態もありますから、必ず中絶しなければならないものと決めてかからず、専門医の診断に頼ることも必要です。

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 急性の突発性脊髄炎は、自然によくなったり、また、治療によって軽快することが多い病気です。しかし、多発性硬化症が突発性脊髄炎の型で起こってくる場合もあり、特に、いったんなおってまた再発するとき多発性硬化症を疑うことが大切です。

 髄腔内炎症に続くもの
 髄腔内感染症といって、脊柱管で、脊髄の外側の炎症に多発します。結核性の髄膜炎や、脊髄膜の外側にある膿瘍によって、脊髄が続いておかされることもあります。

 中毒性
 ヒ素中毒もこのひとつですが、このはか、検査や治療のために行った腰椎穿刺の薬物によることもあります。すなわち、腰椎穿刺では、脊髄の外側の髄腔内に、ヨード油やプロカイン、あるいはスプレクトマイシンやペニシリンなどを注入しますが、これに反応して脊髄炎をおこすものです。ヨード過敏症などの特異体質の場合は特に注意が必要です。

 血管病によるもの
 動脈硬化や先天性血管異常、大動脈の異常、血管炎などから起こり、この場合のおもな病変は脊髄軟化の状態です。この脊髄の軟化は血管が閉塞して起こるもので、一般に脊髄の前方に急に起こり、下半身まひのほか、痛みに対する感じが、おもにまひします。

 代謝性と栄養性
 ビタミン、特にB12の不足や、いろいろな代謝障害によって脊髄がおかされるものです。下半身の感覚異常(しびれ感)のほかに、下肢の運動異常が起こりますが、一般に横断性脊髄炎の型ではなく、索性脊髄炎といわれる型をとります。

 一般に膜部症候、すなわち腹痛、下痢に続いて起こる脊髄症候は注目されています。ときには近い場所で続いて起こるようなこともあり、また、視力も低下することがあります。

 貧血や胃切除のあとの栄養不足の状態や慢性胃腸炎の時、結核薬のヒドラジドを長期間服用しているときにも、このような症候が多くみられます。

 圧迫症
 腫瘍が脊髄の外や内にできる脊髄腫瘍による脊髄炎では、横断性脊髄炎を起こします。腫瘍による圧迫が脊髄の外から加わり、腫瘍のあるレベルに、はじめ神経痛ののような痛みを覚えるもので、早期に医師の詳しい診断を受け、手術することが必要です。

 中年以上では、脊髄の骨の異状による圧迫から起こることが多いようです。特に頸部脊椎症と呼ばれるもので、頸部の老年性変性から、骨のとげが出て、これが首を動かしたときに脊髄を圧迫し、手や足のまひを起こします。中年以上の人に首の運動痛、歩行障害、手足の運動障害が起こったら、一応頸椎のX線検査をする必要があります。

 このような頸部脊椎症があると、いわゆる「むちうち症」などを起こしやすくなります。治療は、くびにカラーを巻いて固定することが大切で、くびの牽引、手術を行うこともあります。

 先天性および外傷性
 先天性のものは脊髄空洞症で代表されます。外傷性のものはいわゆる「むちうち症」などによって、首から下の身体の運動まひを起こす重いもの(頸部における横断性脊髄炎)です。このほかに感電や放射線にさらされた場合に起こります。