三叉神経痛

 顔の部分にみられる神経痛を、一般の人はよく顔面神経痛といっています。これは顔の神経痛という意味では正しいのですが、解剖学的には顔の感覚をつかさどっているのは三叉神経ですので、医学的には三叉神経痛として扱っています。

 三叉神経痛には、原因のはっきりしない本態性三叉神経痛と、ある特定の原因(多くは他の病気)があって起こる症候性三叉神経痛といわれるものがあります。神経痛の起こり方や頻度など神経痛の中でも、最も代表的なものです。年齢的には中年に多く、男女別では3対2ぐらいで男性に多くみられます。

 ● 原因
 本態性三叉神経痛では、先に述べたように原因がはっきりしません。症候性三叉神経痛では、帯状疱疹(ヘルペス)、鼻や咽頭の悪性腫瘍、頭蓋内腫瘍、頭蓋内の病気、血管障害、動脈硬化、多発性硬化症、脳炎、脳脊髄炎などいろいろの病気が原因となって起こるのです。

スポンサードリンク

 したがって症候性のものでは、神経痛のほかにこれらの病気の症状が合併して見られることがあり、神経痛はその一部の症状にすぎないわけです。このように症候性神経痛では重大な病気が原因になっているので、原因を確かめることがぜひ必要です。

 神経痛以外の症状に十分注意するとともに、頭蓋X線撮影、血管撮影、動脈硬化や梅毒の検査、耳鼻科的な検査、髄液検査、その他の神経学的検査などの精密検査を行います。

 ● 症状
 三叉神経痛では、痛み発作が突然あらわれてくるのが特徴で、前駆症状はみられません。痛み発作はそのものの持続は非常に短く、数秒から1分ぐらいですが、繰り返し発作が起こり連続することが多く、ある程度持続します。

 発作と発作の間にまったく痛みのない間欠期がみられます。 間欠期はいろいろで、全く短い場合も、かなり長い場合もあり、そのときどきでさまざまです。発作が起こりやすくなると頻発することがあります。

 本態性のものでは、このような特徴がはっきりしていますが、症候性のものでは間欠期にも弱い持続的な痛みや異常感がみられることがあります。このことが鑑別に大変役立つそうです。

 発作時の痛みはきわめて強く耐えがたいもので、発作中はしゃべることも、唾液を呑み込むこともできないほどです。

 痛みの内容は、刃物で切られるような、電気が通じたような、引き裂かれるような、などさまざまです。痛みは顔の一定の部位から始まり、一方の方向に放散するのがふつうです。三叉神経は脳から出てまもなく眼神経(第一枝)、上顎神経(第二枝)、下顎神経(第三枝)の三本に分かれ、皮膚や粘膜に分布して、それぞれの部分をつかさどっています。

スポンサードリンク

 三叉神経では、これらの各枝に沿って痛みがみられるのですが、このうちでも第二、第三枝によく起こります。多くは一つの枝に限局しているのですが、ときには二つの枝にまたがって、痛み発作のみられる時があります。両側に起こることはまれ(約7%)で、大部分は一側性です。左右では右の方が一般に多いようです。

 痛みが強いときには、本来三叉神経の支配領域とは異なる後頭部や肩、舌や口蓋の部分にまで広がることがあります。発作の終わりに痛みのある側で顔が紅潮したり、涙が出たり、汗をかいたりすることがありますが、この症状はそれほどはっきりあらわれないことが多いのです。

 発作は自然に起こるのですが、時には誘因がはっきりしていることがあります。食事をしたり、顔に軽く触れたり、風があたったり、話をしたりすることで発作が誘発されます。発作を起こしやすいときには、これらの誘因がわずか加わるだけで激痛が起こるので、患者はできるだけ刺激を避けるようにし、過度に神経質になります。

 発作がないときでも、神経痛の起こっている側には触れないように気を配っているもので、ひげをそるとき患側だけはそのままにしておくことさえあるようです。