胸膜腫瘍

 胸膜にできる腫瘍には、胸膜組織そのものが腫瘍化するものと、肺組織、あるいはほかの臓器にできた悪性腫瘍の細胞が、リンパ液や血液の流れに乗って胸膜に転移してできるものとの二種類に大別されます。

 一般に前者は胸膜中皮腫、後者は転移性胸膜腫瘍と呼ばれますが、両者の臨床的な鑑別は簡単ではありません。ここでは、胸膜中皮腫について述べます。

 胸膜中皮腫には、限局型中皮腫とぴまん型中皮腫とがあります。限局型のものは良性の腫瘍が多いのですが、ぴまん型のものは悪性傾向がきわめて強く、予後は不良です。

 一般に40歳以上の中高年層に多く、ことに50歳代によくみられます。また、20歳代の若年層にみられることもあります。性別では、一般的に男性に多いといわれています。しかし、これは比較的まれな病気です。

スポンサードリンク

● 原因
 他の臓器の腫瘍と同じように、原因は分かっていません。体質的な素因との関係についても、特に認められるものはありませんが、生活環境との因果関係については注目を浴びています。ことに、石綿粉塵(アスベスト)による大気汚染が、胸膜中皮腫の発生に密接な関係があるといわれていることは注目すべきです。

 したがって、職業的に多量の石綿粉塵にさらされるような場合は、厳重な防塵と十分な健康管理が必要です。

● 症状
 限局型中皮腫とぴまん型中皮腫とでは多少、その症状も異なるようです。

 限局型の場合
 はっきりした自覚症状はほとんどなく、腫瘍の大きくなる速度もかなり遅いようです。したがって、患者さんの多くは病気に気づかないで、偶然の機会にX線写真で発見されることが少なくありません。

 腫瘍が大きくなると、胸部の不快感や胸痛、せきなどの症状があらわれ、しばしば、各関節の痛みを訴えることがあります。なお、この場合のせきは、ほとんどたんの出ないのがふつうです。

 この型の腫瘍は、類円型のこぶ状となって、胸腔内に向かって発育しますが、この場合、肺側の胸膜から発生するものが多いようです。症状が比較的軽いために、多くは、腫瘍がかなり大きくなるまで放置されているようです。

 ぴまん型の場合
 腫瘍化のために、胸膜は扁平あるいは結節状に、不規則な膨隆ないし肥厚を示しながら、胸膜全体に広がっていきます。ふつう、肺の組織にまで腫瘍が侵入することはありませんが、病気の末期や、特に悪性度の強い場合は、肺組織をおかしたり、ほかの組織に転移したりすることもあります。

スポンサードリンク

 自覚症状のうち、最も多いのは胸痛です。痛みは、腫瘍のある方の胸部に限られ、呼吸に関係なく痛み、時には激烈です。また、呼吸困難を訴えるとともに、たんを伴わないせきが出ます。

 さらに特徴的なのは、漿液性滲出性胸膜炎のように、胸膜内に水(胸水)がたまることです。この胸水には、しばしば血液が混じり、血性胸水となります。胸水は、限局型にもみられますが、ぴまん型に比べると、その頻度は多くないといわれています。

 ぴまん型の多くは、このように胸水がたまった状態で発見されますので、同じような症状を示す胸膜炎(結核性、その他)、肺がんによる胸水、膿胸などの疾患と鑑別することが重要です。