胸膜炎(肋膜炎)

 胸膜炎は、多くの場合、肺の炎症や肺門リンパ節(腺)の炎症が、隣接する胸膜に波及し、そこに炎症が起こる病気です。

● 原因
 最も多いのは結核性の胸膜炎で、胸膜に近い部分の肺の結核病巣や肺門リンパ節結核から、結核菌が胸腔内に侵入して起こる場合です。そのほか、肺炎球菌やれんさ球菌のようないろいろなウイルス、マイコプラスマ、真菌(カビ類)、肺吸虫なども原因となります。また、いわゆるリウマチ性疾患(リウマチ性関節炎など)に伴って起こる場合もあります。

● 病型
 胸膜炎は、胸膜腔内に水がたまるものと考えられがちですが、病理学的には、いろいろな違いがみられます。

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 漿液性滲出性胸膜炎
 胸膜に炎症が起こると、多くの場合、胸膜腔内に液体がたまります。これを漿液性滲出性胸膜炎といいます。たまる液の量は、原因によっても違いますが、一般に、胸膜のおかされ方が強く、その範囲が広いほど多量の液がたまります。

 結膜の初期に起こってくる胸膜炎、結核炎以外の細菌による軽い強膜炎やウイルス性の胸膜炎などでは、麦わら色の比較的透明な液がたまりますが、炎症が強い場合には、血液の色がつきます。

 膿胸
 結核炎以外の細菌による肺炎や肺化膿症に胸膜炎が併発した場合、あるいは、結核性ではあっても、肺結核の空洞(内容は多数の結核菌や脳など)が胸膜腔に破れたり、結核菌に加えて他の細菌が混合感染を起こしたような場合は、胸膜腔にたまった液体は、多数の白血球のために膿となります。これを膿胸といいます。

 つまり、膿胸は、主として細菌によって引き起こされた化膿性の胸膜炎であるといえますが、ただ、漿液性滲出性胸膜炎とやや異なるところは、細菌が胸膜腔へ達する道筋が肺や肺門リンパ節からだけでなく、肺を取り巻いているいろいろな部分から入って、胸膜腔を汚染する場合が少なくないことです。

 たとえば、横隔膜下にできた膿瘍や、食道の周囲の膿瘍から、また、胸壁の外傷や肺手術後の気管支の断端からも、細菌が入ることがあります。

 なお、細菌以外に胸膜腔に入って膿胸を起こすものに赤痢アメーバ(横隔膜下膿瘍のとき)や、放線菌がありますが、これはごくまれです。

 乾性胸膜炎
 すでに肺結核になっている患者が、肺の結核病巣に近く接した部分に限局性の胸膜炎を起こすと、液体はたまりませんが、炎症の結果として、主として線維性の癒着を残すことがあります。これを乾性胸膜炎といいます。

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● 症状
 結核性の胸膜炎では、はじめのうちはほとんど気づかない程度の症状のことがあります。そのまま、自然になおってしまう場合もありますが、やや進行すると、発熱(しばしば高熱)、たんを伴わないせき(からせき)、寝汗、胸痛(ことに呼吸運動と同時に起こる痛み)、疲労感、高度の赤沈促進があります。

 胸腔内にたまる液が多くなると、胸部の圧迫感や呼吸促進が強まりますし、さらに、肺が強く圧縮されるようになると、チアノーゼを起こします。肺内にも病巣がある場合、たとえば結核、肺炎、肺化膿症などがあるときは、たんを伴うせきの出ることが多くなります。

 結核以外の細菌性肺炎やウイルスあるいはマイコプラスマ性肺炎に併発する胸膜炎では、まず、肺炎の症状(高い発熱と同時に、せきやたんを伴う肺や気管支の症状)が先行し、のちに、胸痛が起こり、胸膜腔に液体がたまってきます。

 しかし、滲出液の量は結核性の場合より少なく、X線写真でやっと分かる程度です。肺炎の早い経過とともになおるのがふつうです。

 ただ、細菌性肺炎(ことに肺化膿症など)から膿胸になったときは、経過がかなり長引きます。一般に膿がたまると、しだいに高熱となり(排膿されると熱はやや下がる)、血液中の白血球が増加し、全身状態も悪化します。

 ことに、肺に穴があいて、気管支との交通路(気管支ろう)ができているときは、せきが多くなって、多量の膿がたんとして吐き出されますし、しばしば、血たんを見る場合があります。

 外傷性胸膜炎
 自動車事故などで胸部を強打した後に、胸膜腔に液のたまることがあり、これを外傷性胸膜炎ということもあります。

 しかし、この場合の多くは、外傷による血胸(胸膜腔内への出血)ないし乳び胸(リンパ管が破れて胸膜腔内に出たもの)、または、外傷で全身および局所の抵抗力が弱まった時に合併してくる、各種の細菌性(結核も含む)胸膜炎です。

 がん性胸膜炎
 胸膜にがんが発生、または転移し、特にそれが胸膜に多数ばらまかれた場合、胸膜腔に液体(ことに血性の液体)のたまることが少なくありません。これをがん性胸膜炎と呼ぶことがあります。

 がんの原発部位は、腹部などの臓器のがん(たとえば胃がんなど)のことも、胸膜自体(悪性中皮腫)のこともあります。

● 症状
 原発臓器のがんの症状のほか、この胸膜炎は、がんの転移によって起こりますから、かなり進行したがん患者の一般症状、たとえば全身衰弱や貧血などが見られます。