甲状腺がん

 甲状腺は、喉頭の下部、気管に付着する馬蹄形をした薄い内分泌線で、ここに発生するがんが甲状腺がんです。甲状腺がんは正常な組織とはっきり区別される腫りゅう(こぶ)ですが、がんの性質として、しだいに周囲に拡大する傾向があります。

 甲状腺がんを大きく二つに分けると、腺がんと未分化がんの二種類になります。腺がんは全身のがんのうちでも、最もおとなしい性質をもっているので、発育も遅くて、がんがありながら数年にわたって健康な生活を送っている人も珍しくありません。これに反して、もう一方の未分化がんはきわめて悪性のがんです。

 日本では甲状腺がによる死亡者の数は少なく、世界でも最も少ない国ひとつですが、近年少しずつではありますが増加してきています。腺がんは、20歳代と30歳代が最も多く、小児にもみられることがあります。

スポンサードリンク

 男性と女性を比べると、女性に多く、男性の約8倍といわれています。いっぽう未分化がんは50歳代に多く、わりに男性にもみられます。日本では幸いに未分化がんは少なく、すべての甲状腺がんの4%前後です。

 ● 原因
 他の臓器のがんと同様に原因はよく分かっていませんが、以前にるいれき(頸腺結核)などで放射線治療を受けた人に、長年月経ったあと、甲状腺がんの発生することが多いことが分かっています。広島と長崎の原爆被害者に、他の地域より甲状腺がんが多くみられることも、研究者の間では知られています。

 ● 症状
 甲状腺がんでは、他のがんのように全身的に起こる疲労とか衰弱のような症状はみられません。くびにできるこぶが唯一の症状です。このため、早期に偶然発見されることがあります。また、進行すると周囲の部分に及んで圧迫し、呼吸が苦しくなったりすることから、この病気が発見されることもあります。

 集団検診で首を特に注意して見ることにより、気づかれていない小さな甲状腺がんをかなり高い率で発見した研究がありました。

 腺がんは、早期ではこのようにおとなしい経過をとりますが、長い年月のうちには徐々に進行して、がん特有の悪性症状を表わしてきます。

スポンサードリンク

 転移
 甲状腺がんの転移は、多くの例に認められます。くびの側方のリンパ節が最も多く、転移が生じても、元の腫瘍と同じような性質で、発育は緩慢です。まれに肺や骨などの臓器に転移することがあります。この場合は、それぞれの転移の部位によって症状をあらわし、重体におちいることがあります。

 危険な症状
 がんがしだいに周囲に及んで、気管や食道をおかし、このために呼吸が苦しくなったり、声が出にくくなったり、または食物がのどを通らなかったりすると危険です。しかしこのような圧迫は、通常は徐々に生じますので、急に危険状態になることはあまり見られません。