脊髄の血行障害

 脊髄の血行障害とは、脊髄を養っている血管が閉塞したり、破裂したりして起こる病気です。

 血管が閉塞したときには脊髄軟化が、破裂した場合には脊髄出血が起こります。脊髄の血管には、脊髄の前3分の2を養う一本の前脊髄動脈と、残りの3分の1を養う二本の後脊髄動脈とがあります。

 前脊髄動脈は左右の前角と錐体路(随意運動を支配する神経路)、温度覚、痛覚を伝える神経伝導路を養い、左右の後脊髄動脈は、後角と後索という部分を養っています。

 これらの血管は、脳の血管に比べると、たいへん細く、動脈硬化をあまり起こさないので、血行性障害の発生率は、脳のそれよりはるかに低く、神経系の病気の中でも比較的まれなものに属します。しかし、交通事故がもとで、この病気が増える傾向にあるようです。

 ● 原因と症状
 脊髄の血行障害は、脳の場合と同じように軟化と出血とに大別されます。しかし、脳の血管性障害に比べれば、その頻度はまれです。

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 脊髄軟化
 梅毒などによる動脈炎、髄膜炎後の癒着、脊椎骨折による圧迫、動脈硬化症などによって、脊髄血管の内腔が閉塞してしまったり、解離性大動脈りゅうなどによって大動脈の血液が脊髄血管に流れてこなくなってしまう場合などが起こります。この場合、脊髄の組織は酸素不足となり、神経細胞や神経線維の組織は死んでしまい、脊髄の機能がマヒすることとなります。

 脊髄軟化は前脊髄動脈の領域に起こることが多く、前角、運動路、知覚路がおかされるので、重い症状を示します。

 まず、突然四肢の運動がまひがあらわれ、歩行はもちろん、立ったり座ったりも出来ず、ときには全く身動きできない状態になります。運動まひに前後して、激しい背部痛を訴えることが少なからずみられます。この運動まひは頸髄に軟化が起こった場合には、左右の上下肢全部に、胸髄あるいは腰髄がおかされたときには両下肢にのみあらわれます。

 運動まひを起こした部分には同時に知覚まひも起こり、針で突いても痛みはなく、また、お湯や水をあてても感じがわからなくなります。しかし、ものがさわった感じは、あまり障害されません。直腸や膀胱の機能がマヒするため、自分で排便や排尿ができなくなります。このような運動まひや知覚まひは、いったんあらわれてしまうと、日時がたっても、あまり変化しません。

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 脊髄出血
 この原因は、ほとんどの場合、脊椎にひどい外力が加わったためですが、なかには、先天的な脊髄血管の奇形、脊髄の動脈りゅうの破裂が原因となることもあります。

 症状としては、出血の範囲が小さいときには、手足の軽いまひ程度ですみます。出血の範囲が広いときには、脊髄がちょうど横に切断されてしまったようになるので、重い運動まひと、痛みや温度、ものがさわった感じなど、いっさいの知覚のまひが起こります。

 頸髄に出血した場合は、くびから下全部、胸髄の場合は、胸から腹部以下の部分、腰髄の場合には腰から下の部分に、このようなまひ症状が起こります。どの部分の出血でも、排便や排尿は自分ではできなくなります。

 時間がたって、脊髄内の出血が多少とも吸収されると、まひが少し軽くなることもまれにあります。