肺炎

 肺炎とは、肺の起こった炎症の総称です。1970年代、わが国の十大死亡原因の一つになっていました。

 この当時、4歳以下の幼児では、全死亡率の13.2~19.7%の高率を占め、先天性弱質や不慮の事故による死亡率を除けば、第1位になっていて、65歳以上の老人では、脳卒中、がん、心臓病に次ぐ死亡原因となっており、脳卒中やがんの場合でも、肺炎が直接の死亡原因であることが非常に多かったものです。

 肺炎が起こると、肺の呼吸面積が減少し、必要な酸素を取り入れ、炭酸ガスを排出する働きが障害されます。そしてその障害が程度を超すと、生命が危険になります。いっぽう、肺炎を起こす菌の毒素で心筋や血管神経が障害され、心不全や充実不全の状態を起こして倒れることがしばしばあります。

 また、髄膜炎、膿胸、肺化膿症などの合併症を起こし、生命が危険になることもあります。

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● 種類と分類
 ひと口に肺炎といっても、いろいろな種類があります。昔の分類では、炎症の起こる範囲により、一つの肺葉が一時おかされる大葉性肺炎と、気管支(枝)の小枝単位でいくつかの小葉がおかされる小葉性肺炎(別名気管支肺炎)とに分けれられていました。

 しかし現在では、抗生物質の進歩に伴い、病原体の種類によって分類することが多くなりました。

 例えば、①細菌性肺炎(肺炎球菌・ぶどう球菌・れんさ球菌・肺炎桿菌・緑膿菌など)、②ウイルス性肺炎(インフルエンザウイルスやアデノウイルスなど)、③マイコプラズマ性肺炎、④リケッチア性肺炎、⑤真菌性肺炎、⑥結核菌性肺炎、⑦非定型抗酸菌性肺炎、⑧放射線性肺炎、⑨リポイド肺炎などです。

● 原因
 肺炎は、病気を誘発するような身体的条件も関係します。たとえば、抵抗力の弱い乳幼児や老人をはじめ、すでに病気を持っている人、大酒豪、はげしい仕事に従事する人などに多いのはこのためです。

 一般に寒冷の季節に多いのですが、夏にも起こります。1970年代、インドのカルカッタは暑いところですが、肺炎による死亡率は、世界最高といわれました。

● 症状
 発熱、呼吸困難、胸痛、せきなどの症状が組み合わされてあらわれたときは、肺炎の疑いがありますので、注意が必要です。

 発熱
 突然熱が出るか、それまで軽かった熱が急に高くなります。39度以上になることが多いのですが、老人では比較的低い場合もあります。くちびるに疱疹ができることがあるのは、急に熱が上がった時の現象と考えられます。

 胸痛
 胸痛は、発熱後間もなくあらわれることが多く、しばしば刺すような痛みで、せきや深呼吸によって強まります。肺炎の病巣が下方、または中央部にある場合には、上腹部から下腹部にかけて痛むため、急性胆嚢炎や急性虫垂炎と間違われがちで、実際に、その手術が行われた例もあります。

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 せきとたん
 せきは、発熱が始まってから数時間以上してあらわれることが多いのですが、はじめの数日は、ほとんどせきの出ない場合もあります。たんの色はさまざまですが、「さび色」の場合は、肺炎球菌性肺炎の一つとなっています。

 呼吸数の増加
 肺の炎症が大きくなるにつれて、酸素を取り入れ炭酸ガスを排出する肺胞の数が減少します。その不足を呼吸回数で補うために呼吸数が増加してきます。正常の呼吸数は、おとなでは1分間20以下で、脈拍数の約4分の1以下ですが、肺炎では増えてきます。

 呼吸困難
 山道を登るときのような呼吸の切迫感を訴えます。いわゆる「小鼻が動く」といわれるような鼻翼呼吸があらわれることもしばしばです。

 チアノーゼ
 くちびる、つめ、耳たぶなどが青色、または紫色になります。これは酸素が欠乏し、炭酸ガスの蓄積した血液が、末梢静脈を循環している状態を示しています。

● 経過
 抗生物質のなかったころは、高熱が6~8日続き、そのあと、急激におびただしい発汗とともに数時間で平熱まで下がり、急に全身症状も軽快するという特徴ある経過をとりました。

 上記のことを「分利」といいますが、この分利の際に心臓衰弱が起こって、危険におちいる場合も少なくありませんでした。そのために、これに備えて強心剤があらかじめ用いられました。しかし近年ではペニシリンやその他の抗生物質による治療のおかげで、自然の分利を待たなくても、早い時期に発熱を止めることができるようになりました。

 ただ、熱が下がることと、肺の炎症のなおることとは、必ずしも一致しませんので、X線所見が著しくよくなるまでは、無理を避けなければなりません。通常、X線の陰影は3週間ぐらいのちに消失します。

 経過の異常なものとして、肺炎の病変が一つの肺葉から別の肺葉に動くことがありますが、これは遊走性肺炎と呼ばれ、重症になりやすいものです。抵抗力の弱い人や、病原菌の毒力の強い場合に多くみられます。

 食事
 高熱の出ている間は、胃腸の働きも衰えますので、消化の良い負担の少ない流動食、ないしは半流動食がよく、熱が下がり食欲も回復するにつれて、しだいに普通食に戻していきます。水分は、静脈内点滴注入などによっても供給されますが、飲むことができる場合は、口からも与えられます。

 老人性肺炎
 老人の肺炎は、一般に症状がまちまちで、熱なども若い人ほどでない場合があります。しかし呼吸数が多くなって、何となく息苦しそうな様子がみられ、舌が乾いてくることが多いので、このような症状が見られたら肺炎を疑う必要があります。

 特に気管支炎の症状があるところへ、このような症状が生じた場合は、気管支肺炎に悪化したものと考えて警戒して下さい。老人の肺炎はしばしば炎症が起こらなくて潜行性に進行しますので、早目に病院で医師の診断を受けることが大切です。

 多くは酸素吸入や輸血などの処置が必要となりますので、運搬にさしつかえない限り、入院して治療を受けるべきでしょう。

 治療法は若い人の場合と同様ですが、老人では、たとえば心臓肥大や心筋障害、肺気腫などの不利な条件を持っていることが少なくありませんので、肺炎そのものの処置と並行してそれらの処置も重要となります。